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WESTERN MUSIC ON SHINOBUE

アヴェ・マリアAve Maria

J. S. Bach(1685–1750)/ Charles Gounod(1818–1893) バッハ/グノー
Méditation sur le premier Prélude de J. S. Bach / バッハの前奏曲第1番による瞑想曲

アヴェ・マリアの絵
ウィリアム・ブーグロー『聖母子』1888年
成立
1853年(器楽曲『瞑想曲』として出版)、1859年(『アヴェ・マリア』の歌詞付きで出版)
もとになった曲
バッハ『平均律クラヴィーア曲集』第1巻(1722年)の第1曲、ハ長調の前奏曲(BWV 846)
調・拍子
ハ長調・4分の4拍子・Andante semplice(歩く速さで、素朴に)
この楽譜
Mutopia Project(Yann Leprince 浄書、パブリックドメイン)の旋律に、篠笛の運指を付記

楽譜

標準の運指(一=ド)で書いています。笛だけで吹くなら、何本調子の笛でも同じ指で吹けます(鳴る高さは、笛によって変わります)。ピアノやギターと合わせるときは、一 がドに近い笛(目安として八本調子前後。笛によって違います)を使うか、伴奏の調を笛に合わせてください。

楽譜 1ページ目
⎙笛の楽譜(PDF)A4・1ページ ⎙ピアノ伴奏付きの楽譜(PDF)A4・4ページ ⎙ギター伴奏付きの楽譜(PDF)A4・4ページ ⎙曲目解説(PDF)印刷して、楽譜に添えて
運指の読み方
一 二 三 … 七
呂音(りょおん。低い音)
1 2 3 … 7
甲音(こうおん。一段高い音)。呂と同じ指で、息を強めます
点の付いた 2・3、8
大甲(だいかん。さらに高い音)。8 は大甲のド
数字の右上の ×
半音下げる指づかい(穴の一部を塞ぐ)。塞ぐ量は運指表をご覧ください
赤い ↑ ↓
その音だけ1オクターブ上げて/下げて吹く(笛の音域に収まらない音)
筒
筒音(すべての穴を塞ぐ)

お稽古用の音源

伴奏に合わせて吹くための、コンピュータで鳴らした音源です。「笛の旋律入り」で旋律を覚え、「伴奏だけ」で合わせて吹いてみてください。高さは A=440Hz で、このページの楽譜(標準の運指)と同じ調です。古典調の篠笛では、一 がおよそドの八本調子前後の笛の高さにあたります(笛によって違います)。その笛なら、音源に合わせてそのまま吹けます。楽譜の繰り返しも、そのとおりに演奏しています。

音源
笛の旋律
速さ
合う笛八本調子前後(古典調)一 がおよそドの笛
この音源を保存(MP3)

音源は、MuseScore Studio の音色(Muse Sounds)で、楽譜から作りました。藤舎名玄の演奏ではありません。

作曲者

伴奏はバッハ、旋律はグノーという、150年近く時代の離れた2人の合作です。バッハ(1685–1750)は、ドイツのバロック時代を代表する作曲家で、ライプツィヒの聖トーマス教会のカントルとして生涯を終えました。

シャルル・グノーは、パリに生まれたフランスの作曲家です。1839年にローマ大賞を受けてローマに留学し、システィーナ礼拝堂で聴いたパレストリーナらの古い教会音楽に、深く心を動かされました。帰国後は一時、聖職者を志して神学を学んだほど、信仰の篤い人でした。

歌劇『ファウスト』(1859年)、『ロメオとジュリエット』(1867年)で名声を得たほか、ミサ曲などの宗教曲も数多く残しました。バチカン市国の国歌(教皇賛歌)も、グノーの作曲です。

曲の成り立ち

土台になっているのは、バッハの『平均律クラヴィーア曲集』第1巻の最初の前奏曲です。この曲集は、24のすべての長調と短調で、前奏曲とフーガを1組ずつ並べたものです。最初のハ長調の前奏曲は、和音を同じ形に崩して1小節ずつ鳴らしていく、素朴で澄んだ曲です。その初期の形は、バッハが長男のために作った鍵盤の練習帳(1720年)にも見られます。

1850年代のはじめ、グノーがこの前奏曲を伴奏にして、上に即興で旋律を付けて弾いたところ、のちに義父となるパリ音楽院のピアノ教授、ピエール・ジマーマンが、それを書き留めたと伝えられています。

1853年、ヴァイオリン(またはチェロ)、ピアノ、ハルモニウム(足踏みオルガン)のための『バッハのピアノ前奏曲第1番による瞑想曲』として出版されました。同じ年には、詩人ラマルティーヌの詩を付けた歌も出ています。そして1859年、ラテン語の祈り「アヴェ・マリア」を歌詞にした版が出版され、これが世界中に広まりました。

「アヴェ・マリア(めでたし、マリア)」は、天使ガブリエルがマリアに受胎を告げたときのあいさつに、とりなしを願う祈りを加えた、カトリックで最もよく唱えられる祈りのひとつです。なお、シューベルトの『アヴェ・マリア』(1825年)は、まったく別の曲です。

グノーの曲には、バッハの自筆譜にはない1小節(原曲の22小節と23小節の間)が入っています。19世紀の楽譜に見られる小節で、シュヴェンケという音楽家が、和声の進み方を「直した」つもりで加えたものとされています。そのため、バッハの前奏曲は35小節ですが、グノーの曲の伴奏は36小節です。この楽譜では、27小節がその小節にあたります。

曲調と聴きどころ

伴奏のバッハの前奏曲は、1小節に1つの和音を、同じ形の分散和音で淡々と鳴らし続けます。グノーの旋律は、その和音の移り変わりに寄り添って、長い音でゆっくりと動きます。この楽譜の冒頭には、「瞑想的な気持ちで」(avec le sentiment contemplatif)と書かれています。

旋律は、和音が変わるたびに、そこで一番美しく響く音を選んでいくように書かれています。バッハの和声の中に、もともと隠れていた歌を、グノーが掘り起こしたような音楽です。

曲の流れ

小節の番号は、このページの楽譜の小節番号です。

小節内容
1〜4伴奏だけで、バッハの前奏曲の最初の4小節を弾く(前奏)
5〜12伴奏が前奏曲の頭に戻り、旋律が、長くのばすミから静かに歌い出す。cresc. で少し高まっては、pp に引く、という息づかいを繰り返す
13〜23和音が遠い調へと移ろうにつれ、旋律もしだいに音域を広げる。22小節で f の小さな山をつくり、また静まる
24〜28伴奏の低音が、ド、ファ、ファ♯、ソ、ラ♭と、半音ずつせり上がり、和音の緊張が増していく。旋律は「cres-cen-do molto」と、1小節ごとに一段ずつ高く、強くなる
29〜36伴奏の低音が、ソ(属音)に長くとどまる。その上で旋律はさらに高まり、33小節の tutta forza(全力で)で、曲の頂点を迎える
37〜411回目は、37小節から5小節へ戻って、もう一度くり返す。2回目は結びへ進み、低音がドに落ち着いて、祈りを閉じるように静かに終わる

Mutopia Project(Yann Leprince 浄書、パブリックドメイン)の旋律に、篠笛の運指を付記