明がらすあけがらす
作詞者・作曲者・初演年不詳 目次の題名「あけがらす」

たまさかの逢瀬の短夜に、愚痴を言うまい飽きられまいと心を戒めながら、眠い相手をくすぐり起こして時鳥を聞かせる——後朝の別れを、塒を出てゆく明烏に納める小品。他の曲と異なり『徳川文芸類聚』所収の『歌撰集』による。
あらすじ
たまたま逢う夜と逢えば、その短夜に——愚痴を言うまい、飽きられまいと、心で心をたしなめるけれど、好いた因果のあじきなさよ。眠い眠いをくすぐり起こして、聞いてくださんせ、初時鳥。東雲近い鐘の声、恋しゆかしい夏山の茂み。黒い羽織を後ろから見れば、塒を出てゆく明烏。
詞章と現代語訳
たまたまにあふよとあへばみじか夜に、ぐちをいふまいあきられまいと、心で心たしなめど、すいたゐんぐわのあぢきなや
たまたま逢う夜と逢えば、その短夜に——愚痴を言うまい、飽きられまいと、心で心をたしなめるけれど、好いた因果のあじきなさよ。
ねむいねむいをこそぐりおこし、きいてくだんせはつほとゝぎす、しのゝめちかき鐘の声、恋しゆかしい夏山しげみ、黒いはをりを跡から見れば、ねぐら出て行く明がらす
眠い眠いをくすぐり起こして、聞いてくださんせ、初時鳥。東雲近い鐘の声、恋しゆかしい夏山の茂み。黒い羽織を後ろから見れば、塒を出てゆく明烏。
この曲は詞章の出典が他と異なる。『徳川文芸類聚』第十 俗曲下所収『歌撰集』の本文(著作権消滅)により、繰り返し記号は読みやすく展開し、合方の指示は省いた。原典は目次の題名を「あけがらす」とする。
原典は総かな書きのため、読みやすさを考えて漢字を当てた。ふりがなが原典の仮名である。
「明烏」は明け方に鳴く烏で、後朝の別れを告げるもの。ここでは帰ってゆく男の黒い羽織姿を、塒を立つ烏に見立てて結ぶ。
「短夜」は夏の短い夜。「初時鳥」はその年はじめて聞く時鳥の声で、夏の夜の景物。「東雲」は明け方。
「三下り」は原典の調子の指定。
作詞者・作曲者・初演年は原典に記載がない。流儀・稽古本によって仮名遣いや字句にも異同があるため、演奏の際はお手元の稽古本と照合されたい。