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WESTERN MUSIC ON SHINOBUE

ヴォカリーズVocalise

Sergei Rachmaninoff(1873–1943) セルゲイ・ラフマニノフ
Op. 34 No. 14 / 歌曲集『14のロマンス』作品34 より 第14曲

ヴォカリーズの絵
イサーク・レヴィタン『夕べの鐘』1892年
作曲
1915年(同じ年に出版)
原曲の編成
高い声(ソプラノまたはテノール)とピアノ。歌詞はなく、1つの母音で歌う
調・拍子
原調は嬰ハ短調。4分の4拍子に、ときどき4分の2拍子の小節がはさまる。Lentamente. Molto cantabile(ゆっくりと、よく歌って)
この楽譜
標準の運指の版はイ短調に移調。横山真一郎 浄書(IMSLP、CC BY 3.0)の歌の旋律から入力

楽譜

標準の運指(一=ド)で書いています。笛だけで吹くなら、何本調子の笛でも同じ指で吹けます(鳴る高さは、笛によって変わります)。

楽譜 1ページ目楽譜 2ページ目
⎙笛の楽譜(PDF)A4・2ページ ⎙曲目解説(PDF)印刷して、楽譜に添えて
運指の読み方
一 二 三 … 七
呂音(りょおん。低い音)
1 2 3 … 7
甲音(こうおん。一段高い音)。呂と同じ指で、息を強めます
点の付いた 2・3、8
大甲(だいかん。さらに高い音)。8 は大甲のド
数字の右上の ×
半音下げる指づかい(穴の一部を塞ぐ)。塞ぐ量は運指表をご覧ください
赤い ↑ ↓
その音だけ1オクターブ上げて/下げて吹く(笛の音域に収まらない音)
筒
筒音(すべての穴を塞ぐ)

お稽古用の音源

笛の旋律を、コンピュータで鳴らした音源です。高さは A=440Hz で、このページの楽譜(標準の運指)と同じ調です。古典調の篠笛では、一 がおよそドの八本調子前後の笛の高さにあたります(笛によって違います)。繰り返しは省いて、1回通して演奏しています。

速さ
合う笛八本調子前後(古典調)一 がおよそドの笛
この音源を保存(MP3)

音源は、MuseScore Studio の音色(Muse Sounds)で、楽譜から作りました。藤舎名玄の演奏ではありません。

作曲者

セルゲイ・ラフマニノフは、ロシア北西部の貴族の家に生まれ、モスクワ音楽院で学んだ作曲家・ピアニストです。1897年、交響曲第1番の初演が酷評されて深く落ち込みましたが、ダール博士の治療を受けて立ち直り、ピアノ協奏曲第2番(1901年)で大きな成功を収めました。

1917年のロシア革命のあとは祖国を離れ、主にアメリカで、ピアニストとして活躍しました。20世紀前半を代表する名ピアニストのひとりです。ロシアの教会の鐘や聖歌の響き、息の長い哀愁を帯びた旋律が、作品の大きな特徴です。代表作に、ピアノ協奏曲第2番・第3番、『パガニーニの主題による狂詩曲』、交響曲第2番などがあります。

曲の成り立ち

歌曲集『14のロマンス』作品34の、最後の曲です。曲集のほかの歌の多くは1912年に作られ、ヴォカリーズは1915年に作曲・出版されて、曲集の締めくくりとなりました。ボリショイ劇場のソプラノ歌手、アントニーナ・ネジダーノワに献呈されています。

「ヴォカリーズ」とは、歌詞を使わず、母音だけで歌う歌のことです。もとは発声の練習曲を指す言葉ですが、この曲は練習曲ではなく、言葉のない歌として、演奏会で歌われるために書かれています。歌い手は、好きな母音を1つ選んで歌います。

作曲者自身による管弦楽版もあり、1929年には、ラフマニノフ自身の指揮で、フィラデルフィア管弦楽団と録音しています。今日では、歌よりも、ヴァイオリン、チェロ、フルートなどの器楽で演奏されることのほうが多い曲です。

曲調と聴きどころ

ピアノの静かな和音にのって、旋律が隣り合う音へ一歩ずつ進みながら、途切れずに長く続いていきます。言葉の区切りがないぶん、どこまでも続く息の長い歌になっています。

4拍子の中に、ときどき2拍子の小節がはさまり、拍の区切りを感じさせない、漂うような流れが生まれています。音階を順にたどる動きには、ロシア正教会の聖歌を思わせる響きがあり、嘆きと祈りの両方が感じられます。

曲の流れ

小節の番号は、このページの楽譜の小節番号です。

小節内容
1〜18前半(くり返す)。主題が静かに歌い出され、7小節の poco più animato(少し動きをもって)から高まって、11小節で f に。17小節の ritenuto で前半を閉じる
19〜33後半(くり返す)。poco più mosso で始まり、同じ形を少しずつ高めながら、28小節の ff で頂点を迎える。そのあと、ゆっくりと下りてくる
34〜41結び。旋律が一段ずつ昇りつめ、37小節の rit. で最も高い音域へ。a tempo で歌い下ろし、主音で静かに終わる

標準の運指の版はイ短調に移調。横山真一郎 浄書(IMSLP、CC BY 3.0)の歌の旋律から入力